エンジン冷却の新技術

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新しい自動車を一から開発するのは並大抵のことではありません。

シャシーからサスペンション、それの乗せるエンジンはどうするか、トランスミッションは何にするか、快適装備は何を付けるか、インテリアのイメージはなどなど、非常に細かい部分まで徹底的にこだわりを持って作らなければなりません。

時に難しいのはエンジン設計、ほとんどの場合既存のエンジンやそれを改良したものを使うことになるのですが、新たにエンジンも一から開発することも当然あります。
そしてそのエンジンをボディに搭載するのにもただ形だけエンジンルームに収めるだけではなく、エンジンの大敵となる熱をうまく処理しなければなりません。
エンジンの熱といえば、現在の自動車では基本的に冷却水によって放熱する設計になっています。

エンジンのブロック内にある冷却水の通り道に水を流し、それをウォーターポンプで循環させ、走行風を受ける位置にあるラジエーターまで導き、走行風や強制ファンによる風によって熱を発散させたものをまたエンジンに導くという形になります。
しかし、最近の車はエンジンルームがボディデザインによって小さくなっており、逆にエンジンは大排気量化や低燃費のための補器類などがたくさんつけられるようになる肥大化し、エンジンを収めたエンジンルームはそれこそ手が入らないぐらいキツキツの状態になることが多くなっています。

こうなってしまうと、それによって熱がエンジンルーム内にこもってしまい、場合によってはラジエーターでも処理しきれないということもあるのです。
ただ、エンジン自体の熱はある程度余裕を持った設計となっているので、よほど急激な温度上昇とならない限り大丈夫なのですが、問題は吸気温度もそれによって温度が上がってしまうことなのです。
吸気温度が上がってしまうとシリンダーに入る混合気の燃料の割合が少なくなってしまい、それによってエンジンのパフォーマンスが下がったり、燃費が悪化してしまうこともあるのです。

特にターボエンジンは顕著で、吸気がタービンを通過するときに排気ガスの熱をまともに受けてしまい、更に圧縮されたことによって更に吸気温度が上がってしまうのです。
こんな状態で更にエンジンルーム内の熱を受けてしまい更に温度が上がってしまったらパワーなど出る訳がありません。

ターボエンジンにはインタークーラーという空冷式の吸気温度を下げるものが付けられているのですが、これは走行風によって冷却するだけといういたって簡単な構造で、更にスペース的にラジエーターのように大きなものを設置することができないので、しばしば温度が上がりすぎてしまうこともあるようです。
実はこういった熱対策にちょっと面白いアイデアを出した自動車メーカーがあります。

それはドイツの高級自動車メーカーであるBMW、2015年の7月に行われた先進技術説明会において、BMWの最小クラスである1シリーズに新しい熱対策装備を付けたテストモデルを公開したのです。
その名はウォーターインジェクション、どこかで聞いたことがあるようなネーミングですが、実は3月に発表されたオートバイレースのセーフティーカーであるM4クーペモデルにつけられていたものと同じです。

どういった仕組みかというと、水専用のインジェクターをインテークマニホールド内に装着し、吸気温度が上がってきたときにそこから水を噴射してシリンダー内を冷却するというものです。
日本の夏ではおなじみの打ち水の様な事をシリンダー内で行うということになります。

ただ、オイルの劣化やエンジンのこまめなメンテナンスが必要なため市販モデルには採用されておらず今のところ試作品といった段階となっているようです。
構造的に水をシリンダー内に送り込むということは車自体に水を積んでおく必要があるということになります。

現にM4クーペモデルの時はトランク内の専用の水タンクを持っていて、あらかじめ水をためておき、足りなくなったら補給するという形をとっていたのですが、今回発表された1シリーズのものでは水タンクもあらかじめ水を入れておくということも同じなのですが、減った分は補給するのではなく、エアコンから出てくるドレンの水を溜めこむような仕組みとなっており、エアコンが動いていれば常に補給されている状態になるのです。

エアコンの水がエンジンの下からぽたぽた垂れていて、これを何かに使えないだろうかなどと考えたことがありますが、ここでやっと使うことができるようになったようです。
とはいっても、まだまだ試作段階ですが・・・。

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